豚の呼吸器疾患の管理

豚の呼吸器疾患は、育成期および肥育前期/肥育後期のいずれにおいても死亡原因の第1位となっています。事実、呼吸器疾患は豚の離乳後死亡率の44.2%を占めています1。この割合は重大ですが、呼吸器疾患の悪影響はこれだけではありません。呼吸器疾患を発症した豚は、たとえ生き残ったとしても発育遅延となることが多く、養豚家の収益と世界の食料供給に影響を及ぼします。


豚の呼吸器疾患の原因

豚の呼吸器疾患は多因子性であることが多く、さまざまな種類の感染性病原体が関係します。多くの場合、ひとつの一次感染症が免疫抑制につながり、複数の二次感染症を起こしやすい状態となります。たとえば豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、豚に繁殖障害と呼吸障害の両方を引き起こすウイルス性疾患です。PRRS感染は罹患した豚に免疫抑制を引き起こし、他のウイルス性および細菌性病原体による呼吸器疾患を起こしやすくさせます。

豚インフルエンザウイルス(SIV)のような呼吸器系ウイルスも、豚の呼吸器疾患に多く関係します。SIVが感染した豚は、発咳、発熱、元気消失および呼吸困難を急性に発症します。SIVによる死亡率は低いものの、この疾患は急速に広がって罹患率を高めます。

細菌感染も呼吸器疾患において重大な役割を果たします。これらの細菌は呼吸器疾患の一次病原体として働くこともありますが、多くの場合、すでにウイルス性疾患をもつ豚に二次的に感染します。Actinobacillus pleuropneumoniae(APP)は、軽度の慢性呼吸器疾患から甚急性疾患や突然死までの多様な臨床症状を引き起こす細菌性病原体です。Mycoplasma hyopneumoniaeは、散発性の上部気道症状と増体低下を引き起こす細菌感染症です。PRRSの二次感染症として発現することが多いGlaesserella parasuis感染はPRRSの二次感染症として発症することが多く、発症は急性で豚の急死を引き起こします。


呼吸器疾患の予防と治療

豚の呼吸器疾患の予防には、ワクチン接種と適切な飼養管理手順の両方を含む総合的な対策が必要です。豚を新たに導入するときは、その供給元を確実に知った上で、その供給元の衛生管理手順が安心できるものであることを確認しなければなりません。たった1頭の病気の豚が大規模な感染爆発につながって、豚群の健康に多大な影響を及ぼすこともあるからです。加えて、豚の密飼いを避けることも重要です。密飼いは豚同士の接触を増やして病気の急速な広がりを促すだけでなく、豚の免疫系にストレスを与えることにもなります。多くの場合、ストレスのかかった免疫系は健康な免疫系よりも感染を撃退する能力が低くなります。

最適な栄養とワクチン接種戦略で豚の健康を最適化するようにしてください。適切なワクチン接種手順を策定することは、呼吸器疾患の予防および発症と感染拡大を抑えるうえで極めて重要な役割を果たし、その結果として生産性が高まります。

最後に、感染症が発生したときは即座に治療することが大切です。バイトリル®、プルモチル®およびデナガード®は、豚の呼吸器疾患との闘いに有効な抗菌剤です。適切な医薬品を適切な用量で適切な時期に使用して早期治療を行えば、豚群内の呼吸器疾患の広がりを抑え、これらの疾患が養豚経営に及ぼす影響を小さくすることができます。


1 USDA. (2007). Swine 2006 Part I: Reference of Swine Health and Management in the United States, 2006. Fort Collins, CO: USDA APHIS: VS, CEAH. Publication N475.1007.

2 National Animal Health Monitoring System. (1996). Swine `95: Grower/Finisher. Part II. Reference of 1995 U.S. Grower/Finisher Health and Management Practices, U.S. Department of Agriculture, Fort Collins, Colo. 14-16.